今回は、2023年度台湾在日福岡留学生会の林以芯会長にお話を伺いました。
― まずは留学先の大学と専攻分野について教えてください。
九州大学工学部物質科学工学科に在籍し、カーボンニュートラルの研究を行っています。
研究内容は、地球温暖化やそれに伴う気候変動の問題解決に向けて大気中に蓄積した炭素(CO₂)を直接回収する「ユビキタスCO₂回収」を可能とする分離ナノ膜の研究開発です。
この分離ナノ膜は、厚みはナノサイズですが、膜の平面は手でも持てるほどの巨大なものです。
この研究分野は新しいテクノロジー領域であり、私が知っている限りでは日本のほかに米国,中国及びフィンランドが先行して取り組んでいる分野です。
- 進学先として九州大学を選んだ理由はなんでしょうか。
主な理由は二つあります。
一つは九州大学が脱炭素や水素エネルギー、リチウムイオン電池の研究分野において有名であったので選びました。
私は小学生のときから地球温暖化に伴う気候変動問題について「このままだと地球はヤバいぞ」と危機意識をもっていました。
九州大学は文部科学省が進めるスーパーグローバル大学創成支援採択校(タイプA:13校)の一つであり、英語のみで受験や受講が可能であったため台湾の高校を卒業後に同大学を受験しました。日本語はそれまで全く話せなかったので、大学入学後に勉強しました。
二つ目の理由は、私が高校2年生のときに1年間米国に交換留学した経験から「台湾の外の世界を見てみたい」と考えたためです。
日本は物価が安い上に台湾と文化的に近く、福岡は地理的にも近いので九州大学に決めました。
- 台湾在日福岡留学生会の活動内容や会長に就任した理由について教えてください。
今年度は、台湾と日本の文化交流イベント(4月23日)、新入生歓迎会(4月30日)、九州台湾同郷会と博多どんたく参加(5月4日)、博多山笠土居流(7月15日)、双十節台湾建国記念祝賀会(10月上旬)、忘年会(年末)などのイベント実施を予定しています。
私が会長に就任したのは、お世話になった先輩からお願いされたためでもありますが、私が先輩方からして頂いたようにコミュニティの後輩たちの世話をしたいと考えたからです。
- 続いて台湾での話を伺いたいと思います。出身は台湾のどちらですか。また家族構成について教えてください。
出身は台北市です。家族は両親と姉と弟がいます。母や2歳上の姉とはよく連絡取りますし、家族仲は良いと思います。
- 日本に留学すると決めたときのご家族の反応は?
私は高校生時代から親元から離れて花蓮県の高校に進学していました。日本の大学に進学したいと両親に話したときにはすぐに応援してくれました。
- 台湾の友人と集まったときはどのようなことをしますか。
台湾の若者の間では日本のように飲む文化がありません。私は台湾に帰省して友人と集まったときはドライブや旅行、キャンプなどをして過ごしています
- 趣味や休日の過ごし方について教えてください。
私は海で泳ぐことが好きです。九州大学ではウインドサーフィン部に入っています。台湾にいたときは海水浴場でライフセーバーのアルバイトをしていました。自宅ではネットフリックスで米国ドラマを見ることが好きです。
- 日本の好きなところはどこですか。
私は日本人の細部に目が行き届くところが好きです。ストローに細長いミゾをつくって吸ったときの音が出ない工夫や飲み終わった紙パックを折りたたんでゴミの量を減らす工夫など、日本人の細やかなところに共感します。
- 将来の夢についてお聞かせください。
私は現在工学部4年生で、大学院への進学を考えています。しかし、その先のことについてはまだ悩んでいます。修士課程には進学しますが、さらに博士課程まで進んでカーボンニュートラルの研究を続けるのかどうか。私は人とのコミュニケーションや問題解決に取り組むことが大好きです。将来のことについては、時間はたくさんありますので、これからしっかりと進みたい道について考えていきたいと思います。
- 最後に台湾と日本の関係や日本への要望があればお聞かせください。
日本には台湾が好きな人が多いと思います。台湾にも日本が好きな人が多いので、現在の両国の友好関係は非常に良い状態だと思います。改善できるところがあるとすれば、双方がそれぞれの言葉を勉強するところ、日本人のほとんどは中国語を勉強しています。中国語を勉強することは悪いことではありませんが、台湾には台湾の言葉である台湾華語がありますので、台湾華語を勉強してくれる日本人が増えると嬉しいです。あとはローカルな話になりますが、九大工学部がある伊都キャンパス周辺は交通の便が悪く、バスの料金も高いところが不便です。しかし、これ以外は住みやすいところだと思います。日本人は優しい人が多く、海が近くにあり景色が良いのでとても気に入っています。