火. 11月 26th, 2024

今回は、新義豊株式会社代表取締役の林紀全さんにお話しをうかがいました。

以下、敬称略

-事業内容についてお聞かせください。

林 弊社は2015年7月に福岡で創業しました。主に医療ツーリズムを支援するメディカルサポーター、新型出生前診断(NIPT)や台湾産食料品の物販ビジネスを展開しています。

林 医療ツーリズムは、海外のがん患者が日本の先端医療を受けるための支援サポートを行っています。例えば、私の出身である台湾では、10年ほど前には再生医療分野がまだ整っていませんでしたが、日本では2014年に始まっています。ただし、再生医療は自由診療のため、1クールの治療で300万円ほど掛かります。こうした高額な治療費の問題を解決する一つの方法として、臨床治験があります。臨床治験であれば、数十万円程度の負担で済みます。

林 こうした治療を希望する海外の患者は、標準治療をやりつくして日本での免疫再生治療に最後の望みをかけている方が多いと思います。私の個人的な印象ですが、欧米の医師は治療プロトコルがあるため、それ以上の過剰治療はしません。しかし、日本の医師の場合は難しい場合でも「一緒に頑張りましょう」と言う人が多いと思います。これはどちらが良いとは言えないでしょう。免疫再生治療は、まだ十分に確立された医療分野ではないため、医師は効果について個人差としか言わずに統計を出さない傾向にあります。

林 再生医療は発展途中にありますが、「生活の質(Quality of life)」を向上させながら治療ができる新たな分野であると期待されています。

林 このほかには新型出生前診断(NIPT)のための検査キットを日本の医療機関に紹介しています。NIPTは、妊娠10週からいつでも実施可能で安全な検査です。一般的な染色体疾患(ダウン症、18トミソリー、13トミソリー)、その他の染色体疾患、性染色体(XX及びXY)及び微小欠失症などの検査をすることができます。

林 基本的に日本の産婦人科では、こうしたNIPT検査は必要ないという考えが主流です。一方、台湾ではやって当然という考えです。出産前に検査を受けて、両親が安心して出産に臨むことはとても大事なことだと思います。

-日本で医療ツーリズムなどを始めるきっかけなどがあれば教えてください。

林 もともと私は日本の大学に留学して台湾人留学生会の会長を務めていました。台湾の総領事館を通じて台湾人留学生会にアルバイトの依頼はよくあることですが、その中に医療ツーリズムで来日した台湾人患者の通訳という依頼がありました。しかし、医療用語などの知識が必要なことや、何よりも命に関わるような責任の重い仕事だったので、留学生の誰もがそうしたプレッシャーから手を挙げてくれませんでした。そこで会長だった私が通訳を務めることになりました。この医療ツーリズムの通訳を経験したことにより、人助けや人の役に立つことの達成感を知り、医療ツーリズムのサポートを行う道に進むことを決めました。

-コロナの影響でしばらく人の往来が規制された時期が続きましたが、医療ツーリズムの現状について教えてください。

林 コロナ前の医療ツーリズムは、2週に1回、2泊3日で来日してもらって治療を受けてもらう形でしたが、コロナの感染拡大後は航空便が運休するなど来日の交通手段がなくなったほか、病院においても海外の患者受け入れが一時的に停止される状況になっています。

林 最近では意外にも欧米の患者が増えています。その背景には、円安で日本の高度医療を欧米の医療機関よりも安い料金で受診できる割安感があると思います。こうした背景に加えて、弊社では生成AIの「chatGPT」を使って、欧米の患者向けに日本の医療ツーリズムの案内動画を英語で作成しています。また、英語以外にもベトナム語やタイ語などでの案内動画を作成しており、6月には初めてベトナム人患者のサポートを行いました。

林 弊社では、生成AIツールを宣伝に利用しています。例えば、外国語の案内動画の作成を外注した場合、数十万円から数百万円掛かりますが、「chatGPT」の有料版であれば月額20ドルで済むので費用対効果は非常に高いと思います。

-日本と台湾では文化やビジネスにおいてどのような違いがありますか。

林 日本はきちんと計画して一つずつクリアしていきますが、台湾はとにかくやってみる傾向にあります。その結果、ハプニングが多いと思います。個人的には不安定な感じは好きではないので、日本のやり方がよいと思います。